創始〜律〜 それはきっと僕等の罪… †Ritsu+Allen Side... ぼくはきみをさがしてる… 運命の扉を開いた瞬間、全てが過ちだって、判ってた――― ††† 目の前に舞い踊る翠黒色の長い髪。 目映い笑顔で僕を呼ぶ少女、そう、自分は彼女の一番傍に居る、けど、ふと現実を見つめれば、慈悲も許容もないその関係にとてもやり切れなくなるんだ。 「お兄ちゃん、ネクタイ曲がってる。」 午前『7:52』… 寝惚け眼で支度をし、一階のリビングに降りた僕を、やや低い視点から見上げる丸い瞳。 「もぉー、律お兄ちゃんってば、普段きちっとしてるのに、こうゆう所、意外とズボラなんだから…。」 とりわけ可愛いお節介を焼く彼女は、僕の妹、『早乙女 愛奈』。 実を言うと愛奈は本当の兄妹じゃない、正確には直接血の繋がりのない義妹と言う事になる。 親同士の再婚でそれぞれ連れ子だった僕達は、同じ屋根の下で暮らす義兄妹になった。 つい一月前から同居が始まり、正式な家族になった僕と愛奈。 本来なら賑わしい毎日が訪れる筈だった…だけど妹と顔を合わすその毎に…僕の口からは気の抜けた様な溜息が零れ落ちる… 『妹に恋愛感情を抱く』 世間の人間は一般性に欠けるこの言葉を耳にした時、どんな風に感じるのか。 異常だとか、真ともじゃないとか、きっとそう云う類の、背徳に対する嫌悪感だろう。 勿論僕だって、インセスト(近親愛)的なものに、元から関心が有る訳じゃない。 好きになってしまったのが、偶々、妹になる女の子だった――― ただ…、それだけ。 半袖のブラウスから覗く華奢な腕が、すっと襟の辺りに伸びてきた。 「このまま登校したらカッコ悪いよ?」 ネクタイを整えようとする愛奈の指が、丁度胸元にぴったり当たる。 「だっ、大丈夫、大丈夫だから、自分で直します…。」 「ほらー、動かないで。」 そう言って体を乗り出す彼女、今の二人はかなり至近距離だ。 「‥‥‥‥‥。」 近い距離感にどぎまぎする僕を余所に、愛奈は傾いた結び目を無言のまま直していく。 間近に在る顔をちらりと窺う。 長い睫毛に縁取られた大きな瞳、ぽってりと膨よかな唇、僕は彼女へと、ますます惹き込まれてしまう。 首を少し屈ませれば…届きそうな唇… 『キスしたい』 胸にぐっと迫る衝動を何とか堪えて、心の奥にひっそり眠らせる。 ・ ・ ・ 「ヨシッ、ばっちり決まったね。」 僕の身嗜みを一通りチェックした愛奈が、夏の向日葵みたいに満面の笑顔をくれる。 そんな笑顔を壊したくない、だからこそ、愛奈への想いをきっぱり捨てるべきだと思ったんだ。 事実、血が繋がっていなくても、君は僕の妹、その事に全く変わりはない。 ・ ・ ・ 今考えれば、そもそもの始まりは、あの日に有ったんだと思う。 不可思議な夢を見た、何時だかの朝に…――― ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「‥‥リー‥。 ‥ナリー‥。」 深く濃い暗闇の中に僕は居た。 足が地に着かない妙な浮遊感、現実味のない世界の中、心の隅で『これは夢だ』と識っている自分。 「何処に居るんだっ‥。 ずっと探してるのに‥君を‥見つけられないんだよっ‥。」 あたかも他人を見ている様だった。 何かに打ち拉がれる僕を冷静に見据える僕。 そうしている内に、やがて左腕に鈍い痛みが走り、その時点で夢は途絶えた。 |