終章・聖夜



十二月二十四日、それはイエス・キリスト誕生の前夜祭、家族や友人、そして恋人、そんな大切な人と過ごす一日。


毎年一度だけ訪れる特別な日、世界中のだれもが優しい気持ちになれる幸せな日。


今年も待ち焦がれていたその日がやってくる。


素敵な夢を振り撒いて、あの懐かしい記憶を連れて、『クリスマス・イヴ』がやってくる。


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季冬の頃を迎え、年の瀬も間近なその日、とある公園のベンチで私は一冊の文庫本を読んでいた。



「ルビなしでも読めるようになってきたかしらね。」


理系分野を専心している私にとって、文学的だと言えるこの本は、少しばかり難しい一冊だ。


ページを捲る指先はあかぎれて、がちがちに悴んでいる。


それなのにこの場所に来るときだけは、手袋を嵌めるのがどうしても躊躇われる。


私は公園の中心に聳える立派な大樹を見た。


今日も見知らぬだれかがあの樹に祈りを捧げている。


この公園の大きな樹には、神秘的なジンクスがある。


それを信じて私は毎日ここに通い詰めている、私も見知らぬ人と同じように、あの樹に願いを祈り続けている。


大学の友達は笑う、『ジンクスなんてないよ』とか、『夢見る少女はやめなさい』とか、『彼氏でも作ったら?』とか、みんながみんな、口を揃えてそう言っている。


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…でも、今でもはっきり覚えているの。


形として残っているものは何ひとつない。


だけど心と肌が覚えている。


重ね合わせた手の温もりを、触れ合わせた唇の温もりを、今もしっかり感じられる。


白い季節の白い奇跡を私は忘れない。


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いつかのように、寒い冬の空から白雪がちらついてきた。


「雪の降るイヴなんて、あのとき以来だわ。」


ふいにあの少年の笑顔が心に蘇ってきて、思わず顔を綻ばせてしまう。



しばらく感慨に耽ってから、再び手元の文庫本を読み始めると、目の前にひとつ影が落ちる。


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「…少し話をしませんか?」


胸の奥をくすぐるような、いとおしくて恋しい声音に、私はそろそろと顔を上げてみる。


そこには私の大好きな白い少年…、いえ、もう少年とは呼べない、凛々しいあの人が立っていた。



今までの永い道のり、ひとりきりの永い夜は、やっぱり奇跡(あなた)に繋がっていたのね。


「神さま、最高のクリスマスプレゼントをありがとう…。」


純白の雪が降りしきる聖なる夜、天使のような彼はもう一度、私のもとに舞い降りてきてくれた―――


Merry Christmas to You...
(貴方に素敵なクリスマスを)


Fin...