Selfish
 
 
Selfish我儘・利己的
「…止めとけ、オマエには高嶺の花だせ?」 「そんなの分からないだろ!?  何とか会ってもらえる約束をこじつけたんだ。  俺は、リナリーさんに告白する!」 ・ ・ ・ 廊下での擦れ違い様、ふっと聞こえた男達の声。 聞き捨てならない会話だ。 今のは確か、探索班の… …悪いけれど、貴方には絶対渡しません――― ††† 「…ねぇ、聞いてる?」 「…えっ…はい、済みません。」 むっとした顔が、僕を見ていた。 話半分、上の空で聞いていた僕に、リナリーは怒ってる。 「…ええと、何の話をしていましたっけ?」 「任務の話、ちゃんと聞かなくちゃ駄目でしょ?」 人差し指を差し出して、まるで弟を叱る姉みたいに彼女が言った。 僕の病気…かなり重症だ。 これは、恋の病ってヤツなのかな? 四六時中、頭の中はリナリーで一杯だ。 …あ、今微笑(わら)った。 任務の話なんて、そっち退けで、君の仕草ばかり見ている僕。 そして彼女の表情を窺って、色んな風に考えては、一喜一憂する。 聞きたい事、話したい事。 伝えたい事だって沢山有るのに、君との会話に集中出来ないんだ。 君が気になって仕方無い…。 「…アレン君、最近、変だよ?」 「そ、そうですか?」 リナリーが不思議そうに、僕を覗く。 …顔、近いですってば。 (キスしますよ?) 僕のそんな気持ちに、当の彼女は、これっぽっちも気付いてない。 僕の中のもやもやした思いを、残らず、君に喋ってしまったら、いっそ楽になれるのかも? …いいや、多分、驚かれるな。 話にきりが付くと、リナリーは部屋に掛かった壁時計をちらりと見る。 「…んとね、私、これから約束が…。」 彼女から、ぽつりと、切り出された言葉。 もしかして――― 「その約束って、探索班の人と…ですか?」 「ええっ?何で分かったの?」 「…さあ、何で、でしょう?」 分かるも何も、さっき擦れ違った男の会話を、忘れる筈が無い。 「…じゃあ、そろそろ行くね。」 彼女は軽くウインクをして見せると、僕に背を向けて、この部屋から出て行こうとする。 止める権利は無い、僕は彼女の彼氏じゃ無いのだから。 ・ ・ ・ でも、だけど。 反射的に、リナリーへと…手が伸びた――― 白く細い手首を掴み、君が身動き出来ない様、腕の中に閉じ込める。 両腕に感じる、その柔らかい感触。 僕の甘い熱は、身体の芯からじんわり拡がってく。 胸が苦しくて、息が詰まりそうだ。 如何してこんなに、切ないんだろう。 「…アレン君?」 微妙に揺らぐ声、困惑する彼女の肩を、より一層、きつく抱き締めた。 …嫌だ、行かせない。 こんな時、自分が口の巧い冗舌男なら良かったと思う。 そうすれば、彼女を上手に引き止める事が出来たかも知れない。 君を誰にも渡したくない――― 彼女はモノじゃ無いって、解っているつもりだけど、全部全部、僕が独り占めしたい。 これは不器用な僕が出来る、たった一つの手段。 だから、この腕は離せない――― ・ ・ ・ 「…私、何処にも行かないよ?」 優しい声音で、リナリーがそう囁いた。 僕の身勝手な気持ちを、彼女は汲み取ってくれたみたいだ。 …本当にごめん。 拙い僕は、こんな形でしか、自分の感情を表現出来ないんだ。 仮に誰かに、子供染みていて、みっともない真似だと笑われても。 “君を渡す気なんて無い、何時だって僕を見ていて欲しい格好悪いかも知れないけど、君が傍に居ないと、もう僕は駄目みたいだ――― †凄く前のモノです…;