Ideal
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「…参ったな。」
男は向かい合う少女に、はたと困じてしまう。
今世に未練、己が目的、成し遂げる可き事は、もう何も無い…
過ぎ去りし自身との因縁、それ等に死闘を以て落着を得た彼は、既にその答を見出だしていた…
故に、現世に留まる理由も執着も、彼には無くなっていた…
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悲し気に揺らめく瞳が、男を仰ぎ見上げていた。
追風に靡く長い黒髪がとても綺麗だと、彼は純粋にそう思った。
渾てを終えた自分を、真っ直ぐ見つめる少女。
男は確信しながら、静かに微笑み掛ける。
「…大丈夫だよ遠坂。
俺も、これから頑張って行くから。」
険の取れた何処か見慣れたその面持ちに、彼女は一瞬間、驚いていたが、忽ちに頷き返して見せる。
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何時と云う事を知らぬ間に、煌びやかな光華がゆっくりと彼の周囲を包み込んで往った…
刹那の閃光が止む頃、少女が気付くと、共に同じ刻を過ごした男、英雄エミヤの姿は、もう何処にも見当たらなかった―――
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「…また何時か…絶対に逢いましょう、約束なんだから。」
泣き笑いを浮かべた少女は、天高くに視線を遣ると、そんな言葉を呟いていた―――
†このシーンは、本当に切ないですよね…
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