天使の目覚め


「俺を、どう思っているのか…」


正面切って、セリスに聞いた事はない。


俺の過去を知ってしまっている彼女に、この期に及んで、何を今更、素直に話せるのか…


『お前がそんなに腰抜けだと、セリスも可哀想だ。


 それじゃあ、何処かの男前の王様に、先を越されるかもなあ…?』


そんな冷やかしを俺に言ったのは、エドガーだった。


エドガーの奴、俺の気持ちを知っていて、勝手な事ばかり…


でも恐らく、そうなのかも知れない。


俺は、腰抜けで情けない男だ。


大切な女(ひと)に、『好きだ』さえ、伝えられずにいる…


また、昔と同じ過ちを繰り返すのか?


幾ら後悔したって、悔やみ切れない…


俺が変わらなければ、何も…


…流石に、そればかりは勘弁だ。


今度こそ、自分の想いに正直になって…


今夜こそ、必ずセリスに伝える…


・
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「ロック?


 こんな遅くに呼び出して、どうしたの?」


仄暗い景色に、宿屋の窓から漏れる灯りが、うっすらと端麗な顔を淡く照らしている。


「…夜風はやっぱり、肌寒いな。」


「…うん、そうね。」


取り留めのない会話を、僅かにセリスと交わす。


…これじゃあ、何時もと変わらない、意味がない。


「あのさ、セリス、真面目に聞いてくれるか?」


俺の真剣な声に、彼女が神妙な面持ちをする。


「…。」


「…何?」


優柔不断なのは、男らしくない。


スマートに想いを伝えるんだ。


「…俺、お前の事が…」


「…えっ?


 あ、ロック…っ…?」



気付いたら何時とはなしに、セリスの唇を奪っていた。


はっとした俺は、ほんの沈黙の後に、頭を垂れる。


…何をしているんだ、俺は。


がっくりと落ち込む俺に、彼女が言う。


「ずるいわ、告白の前に、いきなりキスするなんて…」


セリスは、はにかみながら頬を赤らめていた。


「…すまない。」


「…ねえ、ロック。


 貴方の気持ち、今度はちゃんと聞かせて?」


うっ…


そんな綺麗な笑顔を見せるなんて、卑怯だろ…


「…分かった、言うよ、言うからさ。


 俺はお前が大好きだ、誰よりも愛している。」


改めて言うには、顔から火が出る程、恥ずかしかった。


でも、これは事実なんだから、しょうがない。


本当は、好きで好きで、堪らない…


「知ってるよ。


 だけどね、それと同じ位、私もロックが愛しいの…」


そう言いながら、また彼女がふわりと微笑んだ。


俺はセリスを胸に抱き留めて、想いを噛み締めた。


「もう、離してやらないぞ。」


「うふふ、それは上等だわ。」


腕の中の温もりを確かに、愛しく切なく感じながら、『セリス』という『幸せ』を、今度こそ絶対に手放さないと、固く心に誓いを立てた。


†壁ドンですね、はい;