愛契





僕はさながら、生まれたばかりの嬰児のように、彼女の奥深く、その内部に包み込まれた。


それはまさしく、真赤な胎内に戻されたような、嫋々とした体感だった。


契りを交わした君の体内で、僕は空間の広がり、世界の最果て、そこで現し世とは違う次元を視た。


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生ぬるいそこで、繭の中にいるような心地いい安心感を得た…。


君とこうしていると、何故か精神が安定する、心が落ち着く、人知では測り難い不思議な感覚…。


それが喰種同士の交接だから、という訳ではないんだと、何となく朧気に僕は思う…。


あたかも相互の赫子を纏わせ、結び付けている、その甘美な悦びに恍惚と心酔してしまいそうだった…。


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『神代利世』、その存在に手枷足枷を嵌められて、その思念に取り憑かれていた僕を、君が、トーカちゃんが解き放ってくれたんだ。


リゼさんの残り火を残存させないように、影も形もなくなる程、一切を掻き消すように、トーカちゃんは僕に君自身を刻んでくれる…。


紅赤に畝(うね)って歪んでいる視界に、君の裸身が浮かび上がる。


僕らの濃密な愛契を、覆っている膜、素肌で、心身で、因子の核内で感じる事が出来る。


それはまるで、心象風景のように神秘な光景なのに、具体的でくっきりと鮮明に脳裡に焼き付いて行く。


君が刻んでくれた愛を、もっともっと心底の部分で感じ取って…。


何処までも限りなく深層まで達して、二人で縺れ合って落ちて行こう…。


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時に選ばれた僕たちは、今現在、呼吸をして生きている。


けれどもし、いつか歯車が狂い秩序の均衡が乱れて、平和な世の中がこの先、回り回って腐朽してしまっても…。


僕たちの世界が溶けても、壊れてしまっても…。


二人はいつでも繋がっている…。


奇跡めいた運命を信じたい、あの日、僕に希望の光をくれた君を、ずっと抱き締めていたい。


たとえ誰かを傷付けてこの手が汚濁に塗れてしまっても、僕は君だけをひたすら強く想う。


君だけが持っている、この輝かしい煌き、この愛を離したくはない。


そもそも、もう自分自身に嘘なんて吐けないと、僕はとうに分かってしまったから。


この世界にあまねく凡ての嘆き悲しみから、君を守り抜く覚悟は、もとより出来ている。



『愛情』とは、どんな時も穏やかで優しい慈悲の導きなのだと、僕は考える。


だけれどそれは、時として激しく勇み立つ熱を孕んでいる、そしてそれはいつまでも途切れる事なく、継続的に君に向かって続いている―――





†大人トーカちゃん、好き過ぎる…